刀鍛冶道具図鑑
〜非効率主義が生み出す誇り〜「貞豊品質」
大鎚
重量5.5Kg 柄の長さ980mm 頭の長さ280mm
大鎚は鍛錬と素延べの際に使用される。 鍛錬や素延べの際、大鎚を振る方を先手と言い一方、火床で鋼を操作する方を横座という。 大槌を振るのにも技術を要し最初は木の切り株を金床に想定して大鎚を振る練習をし半年〜1年練習してから本当の鋼を叩けるようになる。 |
振り下ろしの強弱、角度、横座とのタイミングがわかるまで大体3年ぐらいは要する。
小鎚
小小鎚
重量1.1Kg 柄長250mm 頭の長さ120mm 中小鎚 重量1.4Kg 柄長280mm 頭の長さ130mm 大小鎚 重量2.1Kg 柄長280mm 頭の長さ145mm 小小鎚は、主に素延べ、火造り、焼き入れ後の姿の調整に用いる。 中小鎚は主に鍛錬、素延べ、火造りに用いる。 大小鎚は、主にテコ付けなどの強い加圧をかけ鍛着させるのに用いる。 |
金床
縦130mm 横160mm 地面からの高さ170mm
鍛錬から火造りまで使用され加熱された鋼を叩くための鉄の作業台です。 素延べ、火造りを行う際は、刀に凹凸が出来ないよう、金床の面は凹凸を無くしておかなければなりません。 その為には常日頃の作業で槌の角で金床を傷つけないよう心がけなければなりません。 |
テコ棒
□15mm 長さ600mm 重量1.2Kg
鍛錬の際、母材となる刀の鋼にテコ棒を鍛着させ、鋼を沸かしたり、叩いたりする仕事棒である。 テコ棒も刀の鋼に若干混じる為、テコ棒の材質も刀とまったく同じ材料を使用する。刀の母材となる鋼とテコ棒を付けることを沸かし付けといい、付けるのには非常に技術を要する。なかなかテコ棒が鋼に付かず、てこずると刀の鋼がどんどん溶けていき本来の長さの刀が出来なかったり、またテコ棒の付きが悪いと、鍛錬中に外れて怪我をする危険性があります。 |
火箸
玉へしから火造りまで広域に渡って使用されます。
火箸挟む口は作業内容によって変化しています。 火箸の重量が重すぎると作業効率が悪く体が疲れやすくなり、又軽すぎる物は、作業中に曲がりやすかったり、挟む力が弱かったりする。 母材と火箸の相性が合わない時は母材を叩いている途中で外れたり母材が宙に舞ったりして怪我をする危険性があります。 |
藁ぼうき
長さ500mm
稲藁を要所要所にきつく縛って棒状にした物 積み沸かし鍛錬の際、積んだ玉鋼を叩いて鍛着させる際に玉鋼が落ちないように押えたり、鍛錬で玉鋼を叩いている際、飛び散る火花が自分の方にこないように保護する為、使用される。 |
焼き柄
長さ500mm 重量500g
焼入れの際刀身を全体に加熱する為に支える柄として使用される 使用方法は刀の茎尻から焼き柄の先に差込み、焼き入れ途中に抜けないようにきつく叩きこんで使用する。刀の幅によって焼き柄の口の幅も変わるので私の場合短刀用、脇指用、刀、太刀用と3種類、用意している。 |
万力
火造り後、刀の棟のセン鋤やヤスリがけによる姿出し作業に使用される。
万力に直接刀身をはさむ際、万力のはさみ口で刀身を傷つける恐れがある。刀の刀身がある程度仕上がった物をはさむ際は、万力のはさみ口に皮か鉛板をかまして刀身を保護する必要がある。 |
せん台
長さ1000mm
刀身を固定する台である。 火造り後のセン鋤やヤスリがけによる姿出し作業、また焼き入れ後の茎仕立て作業に使用される。 |
せん鋤
長さ500mm 重量300g
火造り終了後、焼き入れ前の姿出しに使用されたり、焼き入れ後の茎仕立てに削る道具として使用される。 鉄で鉄を削るという行為は難度が高くせん鋤の刃の硬度が高すぎれば、刃がポロついて斬れなくなり、硬度が低いと刃先がすぐに丸くなって斬れなくなってしまう。 |
ヤスリ各種
火造り終了後、焼き入れ前の姿出しに使用されたり、焼き入れ後の茎仕立てに削る道具として使用される。
基本的にせん鋤で削った後、ヤスリでならすという工程になる。 ヤスリにも表裏があり、コバからヤスリを見ると微妙に反りがあり、外径になる面が表にあたる。 同じ目の粗さでも、国内、国外問わず メーカーの違いによって切れ味、耐久性 に違いはある。 |
研ぎ舟と砥石一式
焼き入れ前刀身の黒皮を取ったり焼き入れ後、焼き刃の出来を確認したり、刀剣研磨師さんに研磨をお願いする前に刀鍛冶自身がある程度砥石で研磨するための研磨道具一式である。
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(令和二年八月追記) 独立当初は十種類程度の砥石で作業を行っていたのですが、刃や地の硬軟の違いや棟用、鎬用、平地用又は短刀用、刀用と分けて行きますと随分と砥石の種類が多くなりました。(約四十種類)1年に2、3回しか使わない砥石もあり、そのような砥石は倉庫に片付けております。 |
銘切り槌と銘切り鏨
銘切り槌 長さ265mm 頭の長さ105mm
重量250g 銘切り鏨 長さ65mm 幅10mm 厚み7mm 刀鍛冶の最終の工程が銘切りである。 道具は極めて単純であり、うまく銘を切るには、場数を踏んで、とにかく練習あるのみである。 |
鞴
全長:1010mm 幅:280mm 高さ:500mm
火床に風を送る装置です。手前の柄を前後することにより風が出る仕組みになっております。 鋼が沸くまでは一定間隔で風を送り続け、鋼が沸き始めると風の送りを弱めたり、強めたりして鋼の温度を調節しながら鍛錬を行わなければならない。 現在、機械式送風機が発達する昨今、沸かしの最後の微調整は鞴でしか行うことができず、刀鍛冶にとってなくてはならない道具である。 |
樋彫り道具一式
刀に樋及び護摩箸を施す道具である。
樋の彫る順序として、せん(図の下半分)にて削る→ヤスリ(図の上半分)にてムラを均して行く→砥石にて表面を磨いて行きます。 樋を彫る際、元と先の止めの部分が難しく、樋の良し悪しを決めるポイントとなり、鑑賞する際は逆に元と先が見所となる。 樋内はムラが出やすく、ムラがあると刀全体の姿、バランスに違和感を感じさせる一因となるので入念にムラを取る必要がある。 |
刀身彫刻の鏨及び豆槌一式
刀身彫刻をする豆槌、大中小と鏨約50本です。
刀身彫刻の順序は下絵書き→荒彫り→ならし→ヤスリ入れ→砥石入れの順番となる。 刀身彫刻に必要なことは、正確な鏨使い、絵心そして根気が必要となる。 鏨の先の形状は1本1本違い、彫刻する図柄によって鏨の先の形状が変わっていくので自然と鏨の本数も増えていく。 鏨の先の形状によってそれぞれ違った名称があるようだが自ら便利のいいように形状を変えているので鏨の名称は不明である。 刀身を彫っていく作業は難しく、鏨の焼入れ具合や、鏨の走らせ具合の微妙な違いで出来上がりの美しさや作業効率に大きく左右する。 |
火床
幅:約20cm 深さ:約20cm
火を使う作業はすべてここで行う 構造は粘土で囲われた両側の壁と羽口と呼ばれる送風口が1つ空いている至って単純な構造である。火を使う作業は勘と経験と度胸(略してKKDと呼ばれている)が必要であり、一瞬の判断ミスが失敗へと繋がる。 火の中での鋼の性は常に変化しており、科学的管理のもと数値化は完全には出来ず、又数値化しようとすることにより必要でない固定概念の発生と勘を鈍らせ、かえって足かせになってしまう。 |
あかがね
左側65mm×35mm×30mm 右側45mm×40mm×30mm あかがねとは即ち銅のことです。 これは焼き入れ後の反りの修正や棟焼きを取るものです。あかがねを加熱し刀身の棟側に当てることにより、反りが生じます。あくまで微調整ですので大きく反らすことはできません。また反り具合も個々の刀によって違いが出ることが多く、まったく反りが生じない物もあります。 また、棟焼きが生じた場合にも同様にあかがねを当てると棟焼きを取ることが出来ます。 反りを出したいがあまり長時間あかがねを当てると匂口が弱くなったり、焼きが戻ったりするのであかがねを当てる際は注意を必要とする。 |
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